羊膜移植と組織バンク

羊膜とは

お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんは、卵膜に包まれており、卵膜を満たす羊水中で浮いています(図1-A, B)。赤ちゃんは、卵膜と羊水によって外的な衝撃や細菌やウイルスなどの感染から守られています。卵膜と胎盤は、帝王切開により赤ちゃんがお母さんのお腹の中から取り出された後に必ず摘出されます。羊膜は卵膜の一部であり、卵膜と胎盤がお母さんのお腹の中から取り出された後に分離されるため、お母さんや赤ちゃんに新たな危険が発生することはありません。羊膜は、細胞とコラーゲンやラミニンなどの蛋白の層からなり(図1-C)、血管を含まない半透明の薄い袋状の膜です。羊膜は、赤ちゃん由来の組織であるため、移植に用いても拒絶反応が起こりにくく、また炎症を抑える働きがあります。薄くて伸縮性に富む組織であることから、昔から様々な医療用途に用いられてきました。近年では、治りにくい目の病気の治療に使用されるようになってきました。

図1.お母さんのお腹の中の赤ちゃんと羊膜
お母さんの体の中で赤ちゃんは、卵膜に包まれ羊水中で浮いている(A)。羊膜は、卵膜の一部である(B)。羊膜は、羊膜上皮細胞層、コラーゲンやラミニンを構成成分とする基底膜及び緻密層からなる半透明の薄い膜である(C)。

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提供していただいた羊膜の所有権について

医療、研究、教育・研修、開発・製造のために使用する羊膜は、皆様のご厚意であまねく社会に対して提供して頂くものです。羊膜を提供して下さった方に特別な利益はありません。また、提供をお断りになっても不利益になることは全くありません。なお、研究開発等によって知的財産を生み出す可能性がありますが、その場合でも、提供者に知的財産の所有権は発生しません。

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羊膜の採取について

胎盤と赤ちゃんを包んでいた卵膜は、必ず帝王切開によって赤ちゃんがお母さんのお腹の中から取り出された後に摘出されます。羊膜は、お母さんから摘出されたこの胎盤及び卵膜から分離されます。そのため、羊膜を採取することによって、赤ちゃんにもお母さんにも新たな危険が発生することはありません。万一、帝王切開によってお母さんや赤ちゃんに何らかのアクシデントが生じて羊膜を採取する余裕がない場合は、羊膜の採取は行いません。なお、羊膜の提供は、帝王切開により出産予定の方にお願いしているものであり、羊膜採取のために帝王切開を行うことはありません。

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羊膜提供者の適格性について

羊膜の提供に関して十分に理解して頂いた後、本人の意思で同意して下さった方から羊膜を提供して頂きます。同意後に提供者としての医学的検査を行い、羊膜の提供者として医学的に適格かどうかを判断します。表1に、検査の内容を示します。この検査は移植を受ける患者さんを守るために行われます。また、これらの検査の結果は、羊膜提供が可能かどうかを判断する以外の目的には使用しません。検査の個人情報は厳重に守られます。

基本情報 性別、年齢、出産回数、帝王切開回数など
診察及び問診1 *1 既往歴、渡航歴、移植・輸血歴、現在の母体及び胎児の健康状態、出産1ヶ月後の母体及び新生児の健康状態など
感染症検査 1 *2 B型・C型肝炎ウイルス(HBV, HCV)、エイズウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血症ウイルス-I型(HTLV-I)、梅毒、淋菌、クラミジア
感染症検査 2 *3 B型・C型肝炎ウイルス(HBV, HCV)、エイズウイルス(HIV-I)

表1.羊膜提供者としての適格性検査

【注1:診療記録の閲覧、問診を行うこと】
患者さん、羊膜取扱い従事者、お医者さんなどの医療従事者の安全を守るために必要な情報を得るために、羊膜採取前に問診を行います。さらに、妊娠の経過やお母さんの既往歴を調査するため、診療記録の一部の情報を開示していただきます。

【注2:感染症検査のためにお母さんが採血を受けること 1回目】
患者さん、羊膜取扱い従事者、お医者さんなどの医療従事者の安全を守るために、お母さんの血液や擦過検体を用いて感染症検査を行います。感染症検査のための1回目の採血は、帝王切開の前1ヶ月の間に行います。お母さんから約6mLの血液を採取させて頂きます。感染症検査の結果をお知りになりたい方は、「同意書」に記載の「検査結果の通知を希望する」に印を付けて下さい。なお、改めて行う感染症検査に掛かる経費は府立医大組織バンクが負担します。羊膜提供のために、お母さんに負担して頂く費用はございません。

【注3:感染症検査のためにお母さんが採血されること 2回目】
1回目の感染症検査では感染初期のためウイルスが検出できなかった場合を考慮して、2回目の感染症検査を受けていただきます。出産の2ヶ月(60日)後から3ヶ月(約90日)後の間に来院して頂き、お母さんから約20mLの血液を採取させて頂きます。この検査において万一異常が認められた場合には病院を通じて報告いたします。 なお、この検査のための往復の交通費をお支払い致します。

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患者様・一般の皆様